スクリーニングツールの問題点

 従来汎用されている認知症のスクリーニングツールは必ずしも軽度の判別を目的として作成されていないため、軽度認知症を判別する十分な感度と特異度が得られない場合があります。

 わが国では病院等の受診例を対象にツールが検討されていますが、かかりつけ医の外来診療現場での検討と、そのニーズを踏まえた専門家によらずに実施できるツールが開発される必要があります。

 スクリーニングでは、軽度例をいかに高い鑑別力を持って検出できるかが最も重要となります。

 従来の代表的なスクリーニングツールである「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」 [加藤 91] と「Mini-Mental State Examination(MMSE)」[Folstein 75] は、高い信頼性と妥当性を持つ検査として、多くの臨床場面で利用されている一方、認知症の重症度が軽度あるいは初期段階の認知症例に対する感度が低くなる等の問題点が指摘されています。

 

HDS-R, MMSEの問題点

HDS-R, MMSEの問題点は、認知症の重症度が軽度あるいは初期段階の認知症例に対する感度が低くなる。 [Ijuin 08] [伊集院 08] [Tombaugh 92]

得点が年齢や教育年数に影響を受ける。[Tombaugh 92]

かかりつけ医からは、スクリーニングツールの実施に要する時間の長が指摘されている。[Brodaty 06]

質問法による認知症の評価ツールであり、十分にトレーニングを受けた検査者でなければ実施できない。[伊集院 09]

採点に際して主観的な判断が入り込む。[伊集院 09]

 

従来の代表的なスクリーニングツールの鑑別力

スクリーニングツール

カットオフ値

感 度

特異度

軽度例の感度

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

20 / 21 点

90%

82%

63.5%   [Ijuin 08]
59.6% [伊集院 08]

Mini-Mental State Examination(MMSE)

23 / 24 点

87%

82%

75.0%   [Ijuin 08]
63.8% [伊集院 08]

[伊集院 09]

 


認知症高齢者の増加

スクリーニングツールの問題点

目的

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臨床データ

成果の概要

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